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選曲統計「水太陽」2015年
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　この選曲統計は、Cat Professor's Selected Listで公表した曲のうち、2015年1月21日〜12月9日の2406曲を対象として、IBM SPSS Statisticsを使用して集計した結果である。

1.リリース年

　表1-1はCat Professorが2015年1月21日〜12月9日に選曲した2406曲のリリース年または録音年（以下、「リリース年」と称す）を、 1964年以前、"Heavenless"がリリースされた1965年から1974年まで、Burning Spear Marcus Garveyがリリースされた1975年から1984年まで、"Under Me Sleng Teng"がリリースされドラム･マシーンとキーボードとの併用が普及し始めた1985年から1994年まで、ジャマイカン・レゲエ不調期の1995年から2004年、"Drop Leaf"がリリースされハード音源DAWが普及し始めた2005年から2014年までのデケイドで区分したものである。
　単純集計の結果は、1964年以前が1.7%、1965〜1974年が8.9%、1975〜1984年が16.8%、1985〜1994年が5.8%、1995〜2004年が1.8%、2005〜2014年が35.8%(、うち2013年が12.6%・うち2014年が14.9%)、2015年が20.1%であった。なお、「不明」の4.6%は、リリース年または録音年が不明な曲であり、ジャマイカ盤は7″EP、12″EP、LPいずれもリリース年を掲載する慣習がほとんどないため(、リリース年の特定を継続中であるが)、ほとんど1984年以前のリリースと推測される。さらに、レゲエをハウスにリミックスした12″EPは、まずリリース年が掲載されていないが、サンプリング･ソースの大半は1984年以前の録音と推測される。なお、リリースされていない未発表曲は5.4%であった。

　選曲のリリース年の特徴は、まず、ハード音源DAWを利用した「Drop Leaf革命」の2005年以降の曲が34.8%+20.1%=54.9%と5割強を占めた。また、ソフト音源DAW利用曲が主流となった2013年以降の曲が12.6%+14.9%+20.1%=47.5%と5割弱であった。一方、リリース年が1975年〜1984年の、ヒューマン･トラック期で、かつ、歌詞の内容がアフリカ、ゲットー、信仰といった"roots"に関するコンシャス･リリックが多かった時期の曲は16.8%と多めである。また、1965年〜1974年の、ヒューマン･トラック期で、かつ、Heavenless革命によりワンドロップと呼ばれるC2･4S3リズム類型が確立した時期である、1965〜1974年が8.9%であり、1965年〜1984年の、いわばヒューマン･トラック&ワンドロップ期が25.8%・さらにリリース年または録音年が不明の4.6%を加えると、30.4%が1965〜1974年と推測される。つまり、選曲をリリース年別に見ると、2013年以降が5割弱、1965年〜1984年が約3割であった。

　月別に2015年1月21日〜〜10月14日に選曲した2060曲のリリース年について見ると(表1-2)、2015年のリリース曲は、4月まではほとんどかけることができなかったが(1月=0.0%、2月=1.4%、3月=4.7%、4月=5.0%)、5月は13.5%、6月は21.6%、7月は29.3%と増加し、8月は20.8%、9月は38.0%、10月は34.4%、11月は37.0%、12月は36.9%であった。

2.メロディック・ベース・ライン

　表2-1はCat Professorが2015年1月21日〜12月9日に選曲した2406曲についてのメロディック・ベース・ラインの単純集計結果のうち、1.04%(25回)以上のものを表示した。なお、これらの11メロディック・ベース・ラインの選曲回数の合計は420回、2406曲中の17.5%であった。
　Intransit(1位・2.41%・58回)、Diamonds and Gold(2位・2.24%・54回)、Cardiac Keys(4位・2.00%・48回)、Drop Leaf(8位・1.29%・31回)、Selassie I Way(10位・1.04%・25回)は、2005年からジャマイカでの主流となった、少なくとも4コード以上使用するメロディ重視のC2･4S3リズム･パターンであり、これらのうちDrop Leafはハード音源DAWであったが、のこりの4メロディック・ベース・ラインはソフト音源DAWであった。Intransit、Diamonds and GoldとCardiac Keysは、いずれもメロディが美しく、かつ、コンシャス･リリックとラブ・リリックとの両方のタイプの歌詞の曲を含むために多用した。
　Clock Tower(3位・2.04%・49回)、Ganja Farmer(6位・1.37%・33回)、Ram Jam(7位・1.33%・32回)、On the Corner(9位・1.16%・28回)は、2014年から流行し始めた2013年までと比べて一層ヒューマン･トラックらしさを強調したアレンジの、ベース･ラインで短2度を多用している点でファンキーなマイナー調2コードのC2･4S3リズム･パターンである。
　Cat Professorは2002年から2015年6月まで、レゲエはほとんど、ワンドロップと呼ばれるC2･4S3リズム･パターンをかけてきたが、2015年7月からは、Liquor(10位・1.04%・25回)のように、ジャマイカで2015年から流行し始めたEDM(Electro Dance Music)風アレンジのS1･4･7(/8)リズム･パターンを多用するようにした。1980年代末から1990年代前半の東京においてレゲエクラブが流行した理由は、S147リズム･パターンがオンビートノリなので日本人に受けたためであるらしい。そこで、2015年の東京において最新型 S1･4･7(/8)リズム･パターンをかけることにした。

表2-1 2015年1月21日〜12月9日に選曲した2406曲のメロディック・ベース・ラインの割合(%)

　表2-2はCat Professorが2015年上半期1月21日〜6月10日に選曲した1161曲についてのメロディック・ベース・ラインの単純集計結果のうち、1.12%(13回)以上のものを表示した。なお、これらの16メロディック・ベース・ラインの選曲回数の合計は296回、25.2%であった。
　トップ３のCardiac Keys(3.01%・35回)、Intransit(2.93%・34回)、Diamonds and Gold(2.76%・32回)は、いずれもメロディが美しく、かつ、コンシャス･リリックとラブ・リリックとの両方のタイプの歌詞の曲を含む、ソフト音源DAWによるC2･4S3リズム･パターンである。

表2-2 2015年上半期1月21日〜6月10日に選曲した1161曲のメロディック・ベース・ラインの割合(%)

　表2-3はCat Professorが2015年下半期7月1日〜12月9日に選曲した1245曲についてのメロディック・ベース・ラインの単純集計結果のうち、1.04%(13回)以上のものを表示した。
　同率1位のClock Tower(2.25%)とOn the Corner(2.25%)、Ram Jam(1.45%)、Ganja Farmer(1.12%)は2014〜2015年の特徴である、よりヒューマン･トラック風でファンキーなマイナー調2コードでソフト音源DAWによるC2･4S3リズム･パターンのメロディック・ベース・ラインである。
　2015年のジャマイカでのメロディック・ベース・ラインのトレンドが、S1･4･7(/8)リズム･パターンの進化しての復活であった。Liquor(2.01%)、High Life(1.45%)、Buy out(1.29%)は、EDM(Electro Dance Music)風アレンジで、BPM=98〜110程度のS1･4･7(/8)リズム･パターンのメロディック・ベース・ラインである。「やっぱ、ボブは最高だぜ」と言って"Exodus"、"Could You be Loved"や""Buffalo Soldier"で踊っていた人たちに人気だった４つ打ちの復活(?)が2014年以降の傾向で、High Life(1.41%, BPM=105, S1･4･7(/8))とGanja Farmer(1.06%, BPM=70, C2･4S3)はスネアの入れ方などのリズム･パターンが異なるが、バスドラムの４つ打ちという点では共通している。
　Intransit(1.93%)、Diamonds and Gold(1.77%)とCardiac Keys(1.04%)は、2011〜2013年の主流であった、BPMが85〜90程度のアップテンポで少なくとも4コード以上使用するメロディ重視のソフト音源DAWによるC2･4S3リズム･パターンのメロディック・ベース・ラインである。

表2-3 2015年下半期7月1日〜12月9日に選曲した1245曲のメロディック・ベース・ラインの割合(%)

3.アーティスト

　表3-1はCat Professorが2015年1月21日〜12月9日に選曲した2406曲についてのアーティストの単純集計結果のうち、0.46%(5回)以上の50アーティストを、既発表曲に限定して表示した。なお、これらの50アーティストの選曲回数の合計は1222回、2406曲中の50.8%であった。
　1位のJah Cure(2.95%・71回)は、2015年7月10日にThe Cureをリリースし、このアルバムからは"Rasta"(同率25位・0.37%)と"Show Love"(同率42位・0.29%)が表4-1にランクインした。2位のHezronは(2.33%・56回)は、2014年にThe Life I Liveをリリースし、このアルバムから"Fly"(同率25位・0.37%)と"Forever and Always"(同率42位・0.29%)が表4-1にランクインした。同率4位(2.20%・53回)のAlaineとKelissaは、表4-1に示したように、曲別の1〜3位を占めた。同率6位のRaging Fyah(1.83%・54回)は、2015年5月26日にJudgement Dayをリリースし、このアルバムから)"Judgement Day"(9位・0.58%)、"Ganja"と"I and I"(同率42位・0.29%)が表4-1にランクインした。
　3位のT.O.K.(2.24%・54回)は、分散したので表4-1のランク外を含めると、(2013)"Best of Me"(表4-1で同率30位)、(trk: Intransit)を8回、(2013)"Diamonds and Gold"(表4-1で同率42位)、(trk: Diamonds and Gold)を7回、(2013)"Crying Out"(trk: Scriptures)と(2005)"Foot Prints"(trk: Drop Leaf)を6回ずつかけた。同率6位のBob Marley & the Wailers(1.83%・54回)は、26位のBurnin'までのWailers(0.75%・18回)と合計すると2位(2.58%・62回)となり、Funkstar Club Mixを含む"Sun is Shining"を7回、Dubを含む"Buffalo Soldier"を6回、Put It On (in Burnin)を5回、"Could You be Loved"と"Jamming (One Love Peace)"を3回ずつかけた。
　レゲエ以外では、アメリカ合衆国の大衆音楽史上最強のボーカル＆インストゥルメンタル・グループであるParliament(24位・0.79%・19回、うち(1977)"Flash Light"(7回)、(1978)"Liquid Sunshine"(4回))をもっとも多くかけ、表3-1ではランク外のFunkadelic(0.08%・2回)と合計すると21回･0.87%であった。メンバーがコーカソイドのグループではPink Floyd(42位・0.50%・12回)をもっとも多くかけ、Pink Floyd(1973)のアルバムDatk Side of the Moonは進歩的ロックの代表作とされるようだが、"Breathe in the Air"などの曲のリズムは、コード・カッティングが4分の4拍子換算で2拍目と4拍目に入っていればレゲエである。ただし、Pink Floydでもっともかけたのは、Syd Barrett在籍時の1967年の"Arnold Layne"と"See Emily Play"の3回であった。

表3-1 2015年1月21日〜12月9日に選曲した2406曲のアーティストの割合(%)

　表3-2はCat Professorが2015年上半期1月21日〜6月10日に選曲した1161曲についてのアーティストの単純集計結果のうち、1.03%(12回)以上のアーティストを、既発表曲に限定して表示した。
　第1位(3.01%・35回)のT.O.K.は、表4-1で示した年間での30位(2014)"Best of Me" (trk: Intransit)、42位(2013)"Diamonds and Gold"(trk: Diamonds and Gold)と、表2-2で示したように頻繁にかけたメロディック・ベース・ラインでの吹き込みが多かった。第2位(2.84%・33回)のAlaineも、表4-1で示した2位の"What a Lot of Love" (trk: Cardiac Keys)、8位の"Jah Is So Good" (trk: Diamonds and Gold)と表2-2で示したように頻繁にかけたメロディック・ベース・ラインでの吹き込みが多かった。

表3-2 2015年上半期1月21日〜6月10日に選曲した1161曲のアーティストの割合(%)

　表3-3はCat Professorが2015年下半期7月1日〜12月9日に選曲した1245曲についてのアーティストの単純集計結果のうち、1.04%(13回)以上のアーティストを、既発表曲に限定して表示した。上位にランクしたアーティストのうち、2015年にアルバムをリリースしたのは、The CureのJah Cure(3.53%)、Judgement DayのRaging Fyah(2.97%) 、Strictly RootsのMorgan Heritage(1.45%)、I Haven’t Been Nicking In AgesのBenji Webbe(1.37%)であり、2014年にアルバムをリリースしたのは、The Life I LiveのHezron(2.65)、Dread & TerribleのChronixx(1.77%)、Africa RedemptionのPressure(1.29%)であった。

表3-3 2015年下半期7月1日〜12月9日に選曲した1245曲のアーティストの割合(%)

4.曲

　表4-1はCat Professorが2015年1月21日〜12月9日に選曲した2406曲についての曲の単純集計結果のうち、0.29%(7回)以上の60曲を表示した。なお、これらの60曲の選曲回数の合計は617回、2406曲中の25.6%であった。
　1位はKelissa(2013)"Selassie I Way"(0.96%・23回)と女性シンガーによるコンシャス･リリックであった。2位のAlaine(2013)"What a Lot of Love" (trk: Cardiac Keys)と3位のKelissa(2013)"Natural" (trk: Intransit)は、ともにレゲエ史上に残る名リズム・トラックでのラブ･ソングの名唱であろう。上位3曲の演奏は、4コード以上使用するメロディ重視のC2･4S3リズム･パターンである。
　4位のQueen Ifrica(2014)"Make You Rock" (trk: Clock Tower)、9位のRaging Fyah(2015)"Judgement Day"、同率11位のChronixx(2015)"Play Some Roots" (trk: Ram Jam)、同率25位のJah Cure(2015)"Rasta" (in The Cure)は、2014〜2015年の流行であった'roots rock reggae'をキーワードとする歌詞であり、ヒューマン･トラックらしさを強調したアレンジの、ベース･ラインで短2度を多用している点でファンキーなマイナー調2コードのC2･4S3リズム･パターンである。
　6位のWayne Marshall(2015)"On the Corner"、7位のAidonia(2014)"Ganja Farmer"、30位のKeida(2015)"Ganja Tea"など、2014年からGanja Tuneもジャマイカで流行した。
　アーティスト別で1位のJah Cure(2.95%・71回)は、2015/7/10にThe Cureをリリースし、このアルバムからは"Rasta"(同率25位・0.37%)と"Show Love"(同率42位・0.29%)が表4-1にランクインし、それ以外では、(2013)"Stronger" (trk: Scriptures)(同率18位・0.46%)と(2013)"Stronger Than Before" (trk: Cardiac Keys)(同率30位・0.33%)が表4-1にランクインした。
　2015年のジャマイカでのメロディック・ベース・ラインのトレンドが、S1･4･7(/8)リズム･パターンの進化しての復活であり、同率11位の"Red Red Wine"は、S147リズム･パターンのElan(2015)(trk: Buy out)とC2･4S3リズム･パターンのUB40(1983)などを、リズム･パターンの切替のために多用した。同じ目的で多用したのが、同率23位の)"Put it On"で、S147リズム･パターンのElan(2015)(trk: Buy out)とC37S5リズム･パターンのWailers(1973)をリズム･パターンの切替に使った。
　Flash LightとLiquid Sunshine以外で、レゲエから他のジャンルへと切替えるために多用したのが、同率30位の、Stevie Wonder(1976)in Songs in the Key of Life or Don Campbell & E-Maculet(2014)"As"、および、Stylistics(1975) or Sandy Star(2011)"Can't Give You Anything (But My Love)"であった。

　表4-2はCat Professorが2015年上半期1月21日〜6月10日に選曲した1161曲についての曲の単純集計結果のうち、0.52%(6回)以上の曲を表示した。1.12%(13回)で同率1位は、Kelissa(2013) "Selassie I Way"とAlaine(2013)"What a Lot of Love" (trk: Cardiac Keys)であった。第3位は、0.86%(10回)のKelissa(2013) "Natural" (trk: Intransit)であった。

　表4-3はCat Professorが2015年下半期7月1日〜12月9日に選曲した1245曲の曲の単純集計結果のうち、0.71%(8回)以上の曲を表示した。1位(1.32%)のWayne Marshall(2015) "On the Corner"は、2014年からリリースが増えた'ganja tune'で、アウトオブキー唱法の2015年版の傑作である。2位(1.06%)のRaging Fyah(2015) "Judgement Day"、 3位(0.97%)のQueen Ifrica(2014) "Make You Rock"と5位(0.88%)のChronixx(2015) "Play Some Roots"は、2014年からリリースが増えた'roots'について歌った曲であった。4位の"Red Red Wine"(0.97%)は、原曲のTony Tribe、ビルボートのポップ･チャートでヒットしたUB40、Elan(trk: Buy out)をかけた。

　表4-4はCat Professorが2015年1月21日〜12月9日に選曲した2406曲についての曲の単純集計結果のうち、1984年以前にリリースされた曲に限定して、0.21%(5回)以上の曲を表示した。
　1位(表4-1では同率30位)の"Don't Stay Away"はPhyllis Dillon(1967)が原曲で、このメロディック・ベース・ラインはEtana feat. Busy Signal(2013)"Love Love Love"(表4-1での同率25位)などでリメイクされている。同率2位(表4-1では同率41位)のJohn Holt(1983)"Police in Helicopter"は、Protoje feat.Mortimer(2015)"Protection"(表4-1での同率41位)などでリメイクされている。つまり、近年ジャマイカでリメイクされていない曲では、Abbysinians(1976)"Satta"(同率2位・表4-1では同率41位)がトップであった。